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SESとかSIerとかジシャカイハツとか、どういうものを指して言っているのか、人によって違うんだが。

SESとかSIerとかジシャカイハツとか、どういうものを指して言っているのか、人によって違うんだが。

SESとかSIerとか、業界外の人でもなんか聞いたことあるワードですよね。
しかしながら、人によってけっこう言ってることが違います。例えば、ブラックだとかホワイトだとか。『それってどっちかがウソついてるの?』って思っちゃいますが。実際にはお互いに違う会社・業態のことを思い浮かべながら話しているという事が多いです。

特にSNSでは言葉の定義が食い違ったままケンカする奴が多数。それふつうに頭悪いぞ。
定義があいまいなまま、自社のビジネスをSIとかSESと説明したら、社員混乱せんか?
言葉の定義を曖昧にしたまま放置って、オマエは本当にSEか?

外野からはそんなことも思ってみるわけですが、お互いこの辺の定義を確認してから話すであるとか、定義を決めようねみたいなムーブは見たことがありません。きっとみなさん、SESと言うワードをとても大切に思っており、自分の定義に信仰心的なコダワリを持っていらっしゃるのでしょう。しらんけど。

さて、まずはだいたいどういう定義で語られているか、まとめましょうか。とりあえず、簡単な方からいこうかな。

【SIerの定義】

いわゆるシステムインテグレーターです。
近年、『請負会社=SIer』と言う認識の人が増えているようです。 が、

以上です。
Wikipediaからの引用ですが、まあどれもだいたいかわらんからこれでええべ。

システムインテグレーションとは、【顧客企業向けにシステムの企画・設計・開発・構築・導入・保守・運用などを一括して提供する】サービスを言います。『請け負う』と言う表現が用いられる場合もありますが、『請負契約』に限定されるものではありません。(法律的には、請け負う・受託する に、準委任も含んじゃう。)

※1 経産省のモデル契約では、上流・運用は準委任。開発は請負契約が望ましいとされる
※2 アジャイルの場合は準委任契約が推奨

ですので、『請負をする会社=SIer』と言う理解は明確に間違いです。一部工程の請負を生業とする会社をSIerとは言いませんし、ほとんどは自称もしません。また、全工程を一括して一社で提供するというニュアンスも含みません。各工程の担当を他ベンダーに依頼し、SIerは全体の責任を負う。管理を行う。で、OKです。だいたいどの業界にも似たような役割の会社は存在します。特に似た業態を挙げるならばゼネコンや、販売代理店と言う事になりますね。

大手SIer

人によって微妙に基準が違いますが、日本の大手SIerの上位5社くらいを指すこともあれば、資本金100億前後以上の20数社を指す場合もあります。いずれも『納品しきる』能力に長けており、それゆえにブランドを有し、その分受注金額も高いことが多いです。

中堅SI・2次請SI・メー子

資本金1億~10億くらいが多いんじゃないかな。
会社規模も100名~数千人と言った感じで幅があります。

『二次請SIって矛盾してねぇか?』
と言われそうですが、案件規模などによっては彼らは元請けの機能を果たすことができますし、積極的に取りに行くスタンスでもあります。
元請けも2次も、どっちもやるって感じですね。

メー子とは、メーカー系SIerの子会社の略称です。規模にもよりますが、多くはこの辺りの会社群に含まれる感じです。

大手ソフトハウス

大きいけれど2次請以降がメイン。狙ってそうしている。そんなシステム開発会社をSIと区別してこう呼ぶ人もいます。かなり社員数が多い会社もあります。これをSES呼ぶ人も最近はいるようですが、2次の役割をこなす場合、ビジネスでの勝利条件がだいぶ異なるものになってくるので、これは『間違っている』でいいんじゃないかな。次の項で挙げる、SESの定義にも当てはまってきません。

このブログの中では、SIerは、請負会社ではなく『システムインテグレーションを行う事業者』の意味で扱います。
また、2次請以降をメインとする、システム開発を目的とする会社は、『システム開発会社』『ソフトハウス』『ソフトウェアベンダー』などと区別して呼ぶことになるかと思います。

【世間でよく見る『SES』の定義】

こっちはめちゃくちゃガバいです。キリがないので代表的なものを挙げます。だいたいこんな意味で使ってる人が多いはずです。

1.サービス名のことである派

一応SESとは、『システム・エンジニアリング・サービス』の略と言われています。なので、普通に考えたら『SES=サービス名』ですねぇ。
サービスの内容については、システムエンジニアが常駐でシステムエンジニアの仕事をする的な感じでしょうか。 しかし、現在SES会社を称する企業群がシステムエンジニアの仕事ばかりしているわけではありませんし、むしろ非技術者が多い会社もあります。実態に即しているとも言いづらい。

現在の実態に合わせてサービス内容を説明するならば、『時間で報酬を得る、派遣に似たサービス』と言った感じになりますかね。
派遣では多重派遣は違法となりますので、『派遣ではない』必要もあります。SESと言うサービスを提供する際に、派遣契約も使う。くらいの距離感でしょう。

SESの起源は、1960年代に設立されたCSK(現SCSK)が『コンピューター技術者の派遣』的なサービスを行ったのが起源であると言われていますが、当時にSESと言うワードがあったとは考えづらいです。SESの語源は様々な説がありますが、前世紀にロースキル派遣の親玉の様な会社が、派遣とは異なるITっぽいカタカナ語のサービス名を作って印象を良くしてみた。というものが個人的には有力かなと考えています。つまり、成り立ちからしてSESは実態を表すワードではなかったワケです。

2.契約名のことである派

『準委任契約のことをSESと呼ぶ』流派ですね。 中堅以上のシステム開発会社でよくみられる印象です。『SES契約』などと言う呼び方もあります。
実はIT業界では2007年まで準委任契約と言う概念が普及しておらず、よく『業務請負』『業務委託契約』などと呼ばれていました。(2007年頃に厚労省・経産省がIT業界の商取引慣習の是正のためのモデル取引等を周知させ、その際に準委任と言う言葉も普及しました。) 
『準委任契約』と言う概念よりも、『SES』と言うワードの方が先に生まれていますので、SES=契約名 という認識は明らかな間違いです。

2000~2010年頃は、SES会社から技術者を借り、また別の会社のプロジェクトにまた貸しすると言った多重派遣のような契約が横行しまくっていました。さすがに『技術者のまた貸しビジネス』などと呼称するのは気まずいので、ちょうどよい横文字。『SES』が普及します。その時また貸しをする側の立場にいるのが、中堅以上のシステム開発会社だったというわけです。

当時までは中小のシステム開発会社をSIerと区別して『ソフトウェアハウス』と呼ぶことが多かったのですが、この時期、ソフトハウスとSES会社に区別はほとんどなかったと言えます。

3.常駐作業することである派

『クライアント先常駐のことをSESと呼ぶ』流派。この流派にとっては作業内容は関係ないため、作業範囲の実態との乖離はありません。この流派は『絶対常駐作業したくないマン』が多く、SESエンジニアや企業に対しての侮蔑的なニュアンスが含まれていることもあります。この侮蔑したい意識が関係するのか、定義のゴールポストがよく動きます。 この場合のSESの例外を挙げますと、

・コンサルティングファームは非SES(コンサルは準委任で常駐する)
・SIerの最上流担当は非SES(やはり準委任で常駐の方が楽)
・リモートワークでもSES(常駐・非常駐は関係なくなった)

早い話が、『ブランドがあるもの=非SES』『ブランドのないもの=SES』と言うのが本当の分類なのかなと思います。
SESは下等なものと言う高角度な前提で話をしてしまうので、2.契約名の流派の人とよくケンカします。彼らにとっては、ただの契約形態であり、『自分たちはちゃんと仕事をしている』と言う主張です。

SESと言う曖昧ワードへの対処法。

ぶっちゃけ素人は使わない方がいいです。

初めて会った相手がSESと言っているとして、それがどういうビジネス・状態・契約を指しているのかは全くわかりません。ですので、特に営業や採用の担当者はこの確認をすることになります。しなければ相手が分類できず、良いかかわり方もわからないままで終わります。これでは時間の浪費。単なる無能です。

ITエンジニアを志す求職者がIT企業に応募するときも同じでしょう。 システム開発を経験したいなら、システム開発を主力にしている会社でなくてはいけないわけですので、そこを確認しなくてはその企業とのかかわり方がわかりません。確認を怠って、家電量販店でケータイを売るのも愚か。ガバい定義でSESと判定されうる企業すべてを回避し、『応募先がない』と宣うのも愚

か。です。SESと言うワードは無視して、絶対に確認しなくてはならないことを聞くなり調べるなりすればよいと思います。

とりあえず、このブログでは『サービス名』でよくね?

だって、システム・エンジニアリング・サービスだし。語源もどうやら『時間で報酬を得る、派遣に似たサービス』のことですし。実態にも近いしね。そして、『時間で報酬を得る、派遣に似たサービス』を主力ビジネスとしている。そうなりたい企業が、『SES会社』と言う事になるんじゃないかな。

SES業界はかなり複雑で、大きく『人出し専門』『仲介専門』の2種があり、それらがネットワークを構成。高効率で人材のやり取りを実現しています。SIのあたりで説明したシステム開発の業界ともまた別の業界と考えていますが、こちらは別の記事で解説していくかと思います。

【自社開発】

だいたい、下記の2パターンかな。

1.Webサービス・SaaSベンダーなどのこと

2.上記に請負の会社も含む

20年くらいIT業界にいますが、実は聞くようになったのはごく最近です。SaaSはSIerやソフトウェアベンダーでも担いでいたりするので、会社の分類としてはよくわかんない感じですが...。

要は、『クライアント先に常駐したくない転職者視点から見て、常駐があるか無いか』と言う話だと思いますので、人材紹介やそのアフィリエイターあたりが作ったワードじゃないかなと。(アフィがブログやSNSで流布する。)

請負を含むかどうかが分かれるのは、ここ10年のWebサ・ブランドの有無に関係するあたりかな? 『そんなのジシャカイハツじゃねえ!』的な。よくわかりません。

ともあれ、採用者側から見て、あんまし印象よくないこともありそうですね。就職先のクライアント常駐の有無は気にするが、会社の業態・目的は重視していない。と言う需要が多かったので発生したワードでしょうから。事業コミットは薄そうな印象を受けます。

このブログの中ではサービスの内容、クライアントの種類、ビジネスモデルやその勝利条件などで企業を分類する事が多くなると思いますので、自社開発と言うワードは、なにかの説明する上では使わないかもです。

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SESとかSIerとかジシャカイハツとか、どういうものを指して言っているのか、人によって違うんだが。