BAMVの差別化戦略と、その他のソフトハウスの差別化軸との違い。得られる専門性への影響
この記事は右の記事の続きです。BAMV(ソフトハウス)のビジネス構造・仕事の流れ
この記事では、SIer商流の主に2次・3次あたりを守備範囲にしている企業を、『SIer』、『SES』等と区別する目的でソフトハウスと呼んでいます。
この記事は、このあたりの会社のビジネス構造などを理解してからの方が分かりやすいので、まだ見てないという方は先のリンク先を先にご覧ください。
SI業界の上層では、各社が何かしらの差別化要素を持っている
これらは、戦略的に取りに行ったものもあれば、長くやってたら自然発生した的なものも含んでます。
逆に言えば、自然発生したので、さまざまな競合を下し、長くやれてる。とも言えるかも。
SI業界上層側で、なぜ差別化要素が生えるのか。どの様な差別化要素があるのか。などを、まずは見ていきましょう。
クライアント(エンド企業)は技術とかそんなに気にしてない
非IT企業であるクライアントは、自分たちのビジネスに役に立てようとシステムを必要とします。
そのシステムが何で作られているかはさほど重要ではなく、そのシステムで何ができるのか、ちゃんと作れるのか、より安いのか、などが重要になってきます。
これら、何ができるのか、ちゃんと作れるのか、より安いのか、等に対応する形で、ベンダー(売り手)企業は強みを有し、強みをアピールする必要があります。
強みはふつう、投資を集中させ、特化することによって生まれますので、ベンダーは強みと同時にオールラウンダーとしての要素は持ちづらいです。
大手SIerと2次請の『得意分野』の持ち方
例外が大手SIerなどの、プライマリー専門の大手企業です。
強みを1点に集中、そこに特化。 なんてしてしまうと、そのニーズしか受注できない訳ですから、大手向きじゃないですよね。
大手SIerなどのプライマリー専門の大手企業は、複数の部門を持ち、それぞれに『強み=看板』を用意し、広い範囲で受注機会を確保します。
当然リソースは不足しますが、このリソースは2次請などの外部ベンダーからの補填で充足させます。
さて、この時にSIerが発注すべき2次請ですが、その時のニーズにマッチした『強み』を持っているとより良いですよね。
ですので、このような『強み』言い換えれば『得意分野』。いわゆる【差別化軸】を持っている2次請は、対SIの取引面で他の競合よりも有利となります。
大手SIerは、取引する下請けを選べる側である。
大手SIerは、言うても日本のトップ層の会社群です。(基準によるが、5~20社くらい?)
巨大な資本金・リソース調達力を持っている時点で、特に大規模開発案件においては他の中小企業を寄せ付けません。
この時の競合はおなじ大手SIer層のみ(最近はコンサルファームも)となりますね。
このように供給が限られる場合、売り手の交渉力がある程度確保されている状態になりますので、受注単価も高いものになります。
受注単価が高いなら、発注単価だって高くできる。
この高い発注単価に下請けベンダーが群がる訳であります。
ですが、先ほども申しましたように、数えるほどしかない企業が大手SIerですので、対下請けに対しても交渉力が強いです。
すなわち、大手SIerは発注する先を選べる立場となります。

2次請は基本的になんらかの差別化軸を有する
大手SIerは、ニーズにマッチした得意分野を有する2次請を選択して発注することができるということになります。
これは逆に言えば、得意分野が無いと発注されづらいという事にもなりますね。大手の2次請である時点で、なにかしらの得意分野を有していると考えられます。
また、一度なんらかの専門領域の案件を受注しますと、それが得意分野となっていき、繰り返し同じ分野の経験をしていくことになりやすいです。
こうして2次請側の専門分野・差別化軸は、『勝手に生える・強化される』ものともいえます。
この2次請に所属しているエンジニアも、この分野に専門特化することとなり、『同分野の案件で20年』と言った、スーパーな専門性を有するエンジニアが誕生することにもなります。
この特化度は商流の階層が深くなるごとに薄くなる傾向があります。
差別化軸の中身
差別化の軸はユーザーニーズの数だけ存在することになりますので、いろいろな軸が考えられるのですが、
ここではとりあえず代表的なものを挙げていきます。
業務知識
わかりやすい例で言えば、銀行、証券、保険、流通、製造、医療といった業種ごとの業務知識です。特定業界のシステムを長く扱っていれば、その業界特有の業務フロー、法制度、データ構造、商習慣、ユーザー部門との会話の癖などが蓄積されます。これは非常に強い武器になります。
安さ
オフショアや、定番のパッケージ・テンプレート等を持っている。等。『日本国内の人間が新規で作る』と言う方法では太刀打ちできない状況を作る訳ですね。種類によってはSaaSもここに入ってくるでしょう。オフショアは品質面で難を抱えることが多かったり、パッケージはパッケージ同士の争いがありますので、後発でも作れば儲かるとはなりませんが。
技術的な要素
特定のツールに強い、特定のパッケージ製品に強い、特定のSaaS導入に強い、クラウド基盤に強い、データ分析基盤に強い、セキュリティに強いなどのニッチ(?)な特性です。
他社製品に乗っかる様な話でもある上、流行りすたりもあるので、経営上、どこに芯となる特性を持つか。次は何を担ぐのか。などなどの戦略が特に重要になる面もあります。
大手の差別化の戦略
大規模な二次請、そしてプライム格のSIによくみられる戦略です。
前述しましたが、大手は複数の部門を持ち、それぞれに『強み=看板』を用意し、広い範囲で受注機会を確保します。
これは、流行りすたりの多いIT業界にて資源の一極集中を避け、単体の事業ではなく、企業全体の継続性を確保する目的で、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント等を使用し、経営資源の配分を行っているものと思われます。

NIKKEI KAI さんのページ
要は、昔からの金融等の利益を元に、これから売れそうなパッケージやSaaS複数に手を出して、その中の一つが流行ったら、他のパッケージを捨てて経営資源を集中。十分に儲けたら、その利益でまた次の伸びそうな事業を....。みたいな、企業内の投資分散と投資のサイクルの話になります。資本力やマンパワーが確保できる、大手ならではの戦略ですね。
BAMVの差別化
かなり特殊なタイプと言えるかと思います。
BAMVはまず、「アジャイル開発」と「新技術への対応力」を軸にしている会社である。と言えるかと思います。
アジャイル軸
もちろん、特定業務の知識が不要という意味ではありません。案件ごとに業務理解は必要ですし、むしろ新規開発では、業務や事業の理解が浅いままではまともな設計になりません。ただ、会社としての色、案件の選び方、育成の方向性、現場で求められる動き方を考えると、BAMVの差別化の為の行動はまず、特定業界への特化よりも「変化の大きい新規開発に、アジャイル寄りの動き方で入っていくこと」から始まると言えるでしょう。
この話をするには、まずIT業界の人月ビジネス構造について触れる必要があります。
IT業界には、ざっくり言えば「人をたくさん稼働させた会社が儲かる」という構造があります。上層の会社は『借りてくる』下層の会社は『雇いまくる』で人員を確保します。 確保した人員を稼働させるには、参画のハードルを下げてやる必要があります。この『参画のハードルを下げる』と、『アジャイル』の相性が最悪です。ですので日本ではアジャイルが流行りません。
(なんちゃってアジャイルは増えたかも)
流行らない訳ですので、同様の特徴を持った企業がとても少ないです。 つまり、【競合が少ない】です。
競合が少ないというのは、ビジネス上、有利な要素でもあります。こうしてBAMVは比較的短期間で商流を上げていくことに思考します。
人月ビジネス構造については下記の記事で。
新技術への対応力軸
こちらは副産物的に発生した特性です。
アジャイルの開発手法は、【作るものが完全に決まっていない。】【技術的なチャレンジ要素がある。】シーンなどで特に用いられます。
これもう、新規開発からになるやん。それも、領域も今までのものとは違う、実験要素とかあるやつ。
新領域のシステムの開発ですので、既存の業務知識を活かしづらく、請負やウォーターフォールの開発とは異なり、作るべき範囲も一定ではありません。
加えて、他のシステムとの連携の要素が少なく、使用技術面での制限が少ないプロジェクトとなります。
制限が少ないなら、新しい技術の方が効率良かったりするので、ふつう、そっちを使うよね。
つまり、【アジャイルの需要では、新技術への対応能力が問われやすく、既存業務知識は問われづらい】という事になります。
2013年設立と後発で、ヒトモノカネコネ何もなしでスタートした会社が、旧来の中堅ソフトハウスの中に割って入るには、ちょうどよい差別化軸だと思いませんか?
結果
実際、競合は少なく、BAMVはスムーズに商流を上げてきた会社と言う印象です。主の取引先として大手SIerとの直接取引があるほか、エンドユーザー直取のプロジェクトも複数と言うのが差別化のプラスの影響です。
マイナスの影響もありました。 やっぱ、【人増えづらい】 そりゃなー...。って感じですね。
原因としては、アジャイルに対応した人材を確保しなくてはいけない為、採用ハードルを高めに設定する必要があったことですね。
技術力は入ってから教えられる要素ですが、その他。読解力、会話力、考える力、変化への耐性が必要になります。経験が浅くても構いませんが、ただ作業指示を待つだけのスタンスでは厳しい。自分の頭で理解しようとする姿勢が求められます。
差別化による、今後の展望
新技術登場によるブースト効果
IT業界は、だいたい10年に1度くらいのペースで新技術が登場し、それまでのアーキテクチャから新しいものへ変化する印象です。
BAMVの『新技術への対応力』は、新技術が登場したタイミングでなくては有効に機能しません。
フロントエンドのフレームワーク(React、Vueなど)、コンテナ技術、などなどを下敷きに、マイクロサービスアーキテクチャ寄りのモノづくりに代わって、Go言語が流行って...。みたいなのが、早くも10年前。 当時は『偽フロントエンジニア』の様なものが大量発生。2018年頃には彼らが残した使い物にならないフロントを捨て、バックエンドエンジニアがフロントを直すと言うどうしようもない展開が広がっていましたが、
今まさに、『AI』の文脈で似たようなことが起きているかと思います。
そうです。今が技術の転換期ですので、『新技術への対応力』を持つ会社・エンジニアが有利になるタイミングです。実際、2026年4月の時点で、BAMVのエンジニアのプロジェクト内でのAI使用率は100%となっており、『最初期に経験しておく』フェーズは完了しています。
『新技術への対応力』と『タイミング』が揃っても、『商流』が必要です。
SESライクに、『ほかの会社』を挟んでプロジェクトに参画...となりますと、その『ほかの会社の手柄』となってしまいます。
BAMVは前回のタイミングではまさにそのポジションでしたが、今回は別です。相手はエンドユーザーや大手SIerとなります。今後5年を有利に戦う為の実績を得る。または、この機会を活かして最大限にシェアを取る。これらが実行可能です。
人月ビジネス構造崩壊による影響
これはありますね。
一番痛いのは、【商流が上がって、これからそれを活かした戦い方(人を借りてくる)をする】で、勝ちが見えていた、これからってところに、AI来ちゃって【人をたくさん稼働させたら儲かる】と言う構造が無くなってしまう事ですね。せっかくこれからオレツエータイムだったのによー。
人月ビジネス構造の崩壊については、先ほどと同じ記事になりますが、下記で触れています。
人月ビジネス構造については下記の記事で。
BAMVはこの記事で言うところの【有利な会社】には当てはまりますので、その有利を活かす。 バンバン前に出て行ってAI使って生産性を上げる。RAGシステム等の業務システム内のデータ取ってきてクローズドLLMに食わせる等のイマドキシステムの開発プロジェクトにはとりあえず刺さる。なんなら実績も作る。
他人の仕事を奪う事にはなってしまいますが、これからはサバイバルゲームですので、そういう事気にしている場合じゃないんだわ。まずは自分らが生き残ってナンボ。
ちなみに、『寺野さんAIの登場による人月ビジネス構造の崩壊って、読んでたんですか?』とか言われたりしますけど。
いえぜんぜん。 マジでタマタマです。たまたま、マシなポジション取れてます。
追加の差別化要素を得る方法
『既存の専門能力』、『マシなポジション』に加えて、生成AIが普及した後の世界で、有利に戦えるであろう特性を持った事業会社とは積極的に組むべき。と考えています。
『新技術への対応力』を活かせる次のタイミングが10年後だろうと考えると、ここで勝負しとくべきじゃと思う。
BAMVへの応募を検討して、この記事を読んでいる方がもしいるのだとしたら、BAMVの今後5年の戦略はこんなです。ビジネス構造崩壊によるIT不況の要素にはしかるべき対処をしつつ、次の構造で儲かるポジションを、ここで何としても獲得します。
ぬくぬく手に職つけたい系の方よりは、最速で成長し、これからのAI前提の新秩序に有利な角度で切り込み、ポジションを得てやるんや! くらいの主体性や覚悟があった方が、より良いかと思います。
書いた人…寺野 克則
技術的な話もするのでエンジニアと思っている人が多いけれど、実際には営業系の経歴。(Twitterも【寺野 克則(ITだけど営業視点のアカ)】と、営業系を押し出しているのに。サムネ画像の印象が強すぎるのか。) 商品は【会社の技術】なのだから、商材を知らなすぎる営業ってふつうはあり得ないんだよ。論外。 ITには20年くらいいて、その前は法人向け通信機器販売。アレ系。 転職回数がめちゃ多く、それによりさまざまな業態からIT業界を見ることに。サービス・人材派遣・人材紹介・SES・ソフトハウス。 派遣で工場行ったこともあるよ。 リーマンショックがトドメとなり、営業としてまっとうな企業に正面から入社できる確率よりも、自分で作った方が確率高い(リスクも低い)なってことで起業。 業界の知見だけはあるのでそれを活かしてWantedlyブログやTwitter。まあまあバズったのと、ほかにもいろいろで、自前ブログに記事を載っけていくことにした。

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