SI業界(下請含む)とそのビジネスモデル(中の人の立ち回りかた)について細かく語る記事
またいい加減なサムネ画像でありますが、ChatGPTくん製です。 見ての通り、この画像は世間の怪しい記事の影響をだいぶ受けております。
近年、このあたりの業界・会社を調べようとしますと、就職指南系や人材業界の『うーん。これはちょっとウソ入ってんな』くらいの精度の記事がひたすら検索に引っかかることになっており、それを参照しに行くLLMも、同じく不正確な情報を吐き出すことになります。
なんかもー、どうしようもないので、就活生の業界研究向けに一本作っておくかと言う記事。
ガバいIT関連業界の全体図

と、広大な世界が広がっておりますが、
そのうちSIerとその下請け界隈と言うのがどこに位置するかと言いますと、
ココだけと言う感じです。

そんな狭いSI界隈ではありますが、発注者はメガバンクや大手製造業はじめ、日本国内の超大手企業ばかりとなりますので、IT業界全体へ流れる案件の量と言うのもたいそうな規模の話になります。
SIerってなによ?
下記の記事でもSIerの定義や大手SI、中堅、大手のソフトハウスなんかの話を書いてます。
SIについてのみ語ってる部分の分量は多くないので、先に見ておくとよいかも。
SESとかSIerとかジシャカイハツとか、どういうものを指して言っているのか、人によって違うんだが。
簡単に言いますとIT業界でゼネコン役を担当する企業で、『=請負をする会社』ではありませんし、請負がメインと言うのもウソかと思います。(上流ほど請負契約にはしないので。)クライアントに対して元請の役割を担当する機能があり、【企画・設計・開発・構築・導入・保守・運用などを一括して提供する】会社になります。
すべてをSIの社員のみで提供する必要はなく、案件の特性に合った協力会社(ビジネスパートナー:BP)に支援してもらって提供する。でOKです。
ITのほか、建設業界、広告業界、製造業、その他いろいろな業界で見られる構造ですね。完成品の自動車売るのはメーカーですが、部品を一社ですべて作ることは無いですから。

2次・3次から見たSIerの機能は、『受注』と『PJ管理』、そして『リスクテイカー』 いわば責任を引き受ける役割の企業であり、2次3次のみならず、クライアントから見ても金融・保険的な機能を提供していると言えます。 SIが赤字こいても納品はされますし、2次3次も売上は入ってくるわけです。
要は大手SIを挟んで置けばなんとかなる訳ですね。
代わりに、プライム専門のSIerの多くは100億を超える資本金を持つ巨大企業となります。機能を果たすためにはそれだけの体力が必要と言う事ですね。
2次のあたり
SIerを中心としたSI業界エコシステムにおいて、システム開発を行う主体と言う感じでしょうか。
SIと区別して『ソフトハウス』と呼ぶこともあります。
まずSIが『受注』の機能を発揮して、クライアント層の潜在需要を受注。
この時のクライアントの業種や要望の種類は様々で、システム開発に要求される専門性も様々と言う事になりますが、この専門性の『幅』を担保するのが多数の協力会社の機能です。
専門性は、『銀行の●●業務』『基幹の管理会計』『SaaS、パッケージ(安く上がるので)』などなど、さまざまなものがあり、必要な要素に合わせて協力会社がチョイスされます。なかでも、銀行、保険、証券などの金融系企業のシステム開発需要は大きいため、金融系のあたりに専門分野を持つ2次請、3次請のベンダーも多くなります。
案件規模によりますが、2次請くらいですと、それなりの規模感で提供されるレベルの生産量を要求されることとなるので、基本的に単品派遣の様な需要はまだありません。
2次請層もそれなりに大きな会社が多く、人材会社の解説サイトなどではSIerと誤認されていることも多いです。(加えて、自称してたり、一部でその機能は果たしていたりで、けっこうややこしい)

3次のあたり
新規のシステム開発プロジェクトをウォーターフォールモデルで進めるとして、
超上流・PJ化を『PJ管理』の機能を持つ元請のSIが担当。
要件定義~外部設計のあたりでコアとなる2次請の会社が参加。仕様と方式を握ることになります。
PJに必要な人数が多くなる内部設計・詳細設計のあたりから増員で入ってくることが多いのが、主に3次請のベンダーです。
3次請企業は、主に詳細設計~単体テスト回りを受注するプログラマーメインの業態と言う事になりますね。(実際そこまで単純でもないが)
担当業務の違いからか、2次では『銀行』『証券』『管理会計』などと細かめだった得意業種・業務も、3次では『金融』『基幹業務』などと、急にガバっとしてきます。業務自体が得意と言うよりは、ある程度固定的な相手(2次請)からの仕事が多いので、『金融』などの範囲で偏りが出るってことかもしれません。
プログラム製造周りは請負契約での受注が好ましいとされているため、この領域では受託会社が多い可能性もあります。(この辺は自信ない)
『ニアショアやオフショアへ開発が流れた』と言う状態はまさに『請負で外部に発注した』状態と言えますので、まあ、当たってはいるのかな?

引用:企業法務弁護士ナビ
参考:モデル取引・契約書|経済産業省商務情報政策局情報処理振興課
SESのあたり。
今回の話の本題じゃないのでサラっとだけ触れます。
(SESに関してはほかの記事でメインで触れていたりしますので、そちらをどうぞ。)
SESは、2次・3次の体制に対して1名づつ参画する印象です。
SES側は責任を負わないメリットがありますが、その反面、設計者にしろプログラマーにしろ、上位会社から即戦力だけを要求されてしまう傾向が強く、体制を組んでも権限が得られず、リターンが少ないです。リターンが少ないのに即戦力ばかり集めてチームを組む動機がありませんので、SES会社の『チーム・体制化』とは、多くの場合、ロースキルとベテランのバーター売りの事を言いがちです。
しかし上位会社側は即戦力だけ欲しい訳ですので、なんだかんだ市場では『1名の経験者を派遣してほしい』と言う意向が強くなります。
このあたりがビジネスモデルが切り替わるラインです。(実際は3次とSESの境目はあいまい)
プライム格SIの配下の2次請となると、SES型の企業が極端に減りますので、このあたりの相性はやはりわるいものと思われます。

人月ビジネス構造
下記の記事でも解説しています。
【人月ビジネス構造も解説】 LLMでIT(SI)業界が崩壊って、実際どうなるの?
ですので、ここでは同じ内容の解説は避け、結論だけ引用し、各業態での立ち回りなどについて語るが良いかなと。
(上記の記事では、人月ビジネス構造の成り立ちや『儲け方』などに触れています。)
要は、たくさん人を稼働させたら儲かるという市場構造
上層は、【増員枠を用意する】そこに【人を借りてきて頭数を揃える】
下層では、【工夫して採用ハードルを下げる】【雇って頭数を揃える】かつ、【稼働率を高くする】
が、この構造内での『儲け方』であり、現在成功している企業の多くはこの法則に沿っています。
SI内部での立ち回り
ある意味『借りてきて数を稼働させる』を最も効率よくやれている企業と言えます。
SIの領域はコンサルファームに比べて1名あたりの売上額が高くはありません。
東証プライムの上場企業の社員が一名で月に稼げる額が100~200くらいと言うのは厳しいです。自社のメンバーの売上だけでは自社のメンバーが食う事ができません。ですので、仕組みで儲けるのはある意味必須と言えます。

引用:オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 コレ1枚でわかるSI事業者間で利益格差が生まれる理由 斎藤 昌義さん
と言う訳で、SIerのビジネスでは、『1プロジェクトに関与する自社社員の数をなるべく少なくする』ことが求められます。なるべく外部ベンダーの人員でプロジェクトを構成したほうが、会社全体での利益率が大きくなるわけですね。
SIerの社員の役割は、『受注』と『PJ管理』、まずは営業とプロジェクトマネージャーです。
営業
営業は多い方が受注に有利となりますが、SIビジネスの場合は生産可能な量以上の受注はできませんので、営業がいたらいただけ儲かるという構造にはなりません。いないと『受注』の機能が果たせませんが、多すぎてもコストが膨らむ。IT業界では営業はコストセンター的な扱いとなります。(ちょっと珍しいね)
プロジェクトマネージャー(PM)
対してプロジェクトマネージャー(PM)はまさに主役と言えます。
極論として仮に、PM1名と、協力会社20名の構成で月に800万の利益が上がってるとしましょう。これもう、1名の働きとしてコンサルファームのエース格の利益額を抜きうるわけですよ。 もちろんなかなかそんな簡単にはいかないんだけどね。
テクニカルアーキテクト・業務SE
なんで簡単にいかないかって、協力会社も常にそんな理想的な体制なんか取れないからです。
大規模なシステム開発の上流において、高度な方式設計を担当するであるとか、その他技術的な課題に対応する、技術側のお助けマンがいると助かりますよね。なのでSIは自社で用意します。
会社によって呼び名は違うかもですが、テクニカルアーキテクト(アーキ) などと呼ばれることが多いのかな? 独自部署があり、複数部署をまたがってPJ側の支援に送り込まれたりする印象です。ほか業務SEなど、特定業界に精通したスペシャリスト職を配置する会社もあります。
これら、サポート側の支援は受けつつも、プロジェクトで成果を出しつつ、利益を最大化するのがPMですので、基本的にPMが主役の業態と考えてよいかと思います。求められる結果は『利益』な訳ですので、技術系職種とはいえ、かなりビジネス寄りの資質が要求されるかなと思います。少なくとも利益とか売上とかクライアントの満足とかそういうのを考えたくない人には向きません。
PMもベーススキルはシステムエンジニアであるため、SIerは『システムエンジニア』として新卒を募集。育成し、途中でキャリアが分化と言う事になっていくのですが、わりとここで離職が発生しがちな印象ですね。アーキになるだけの自己学習はできないが、PMルートもキツい....。と言う感じで知り合いのいる2次請などに移籍することがよく見られます。
新卒の方は、自分の特性と一致するかどうかをよく見極めて応募しましょう。
2次請側の立ち回り
すこーし、いやだいぶ? 良くも悪くもシステム開発会社っぽくなってきます。
基本的にプロジェクト内の主力のエンジニア達が在籍する会社と言う事になります。自社の得意分野・受注が多いタイプのシステム開発需要に特化してしまう傾向もあり、汎用的に使える人たちかどうかは会社によるかなと思います。
さて、プロジェクトを進めるにあたり、管理などでPMの工数を食われまくるのは、SIにとって効率的ではありません。下図のように、オレンジの枠の規模で2次に作業依頼。2次のリーダーが自社体制内に作業を割り振り、レビューも担当する形が都合がいいです。 『丸投げ』と揶揄されることもある状態ですね。

しかし実は、この『丸投げ』の状態を作ることは2次請側の利益にもなる話です。
PM側は2次のメンバー構成がどのようなものであれ、オレンジの枠の作業が遂行できている時点で不満を感じません。下図のように増員を行いやすくなります。 こうして自社の新卒の育成枠や、協力会社のメンバーを投入する枠を作り、育成する・利益を得るなどの成果を得る事ができます。
この様に、元請のSIerと2次請のソフトハウス間の利害は非常に一致しやすく、うまい関係を作れている同士は強固に結びつくことも多いです。
しかし、この利害構造はやや複雑であるとも言え、2次請に入社する人員10人中10人が理解できるモノでもないようです。
採用は新卒中心で行われ、このあたりの勘が良い、視座が育ちやすい人間が次期リーダー層として成長し、逆に理解できない人間がSES側へこぼれていくという、『ふるいにかける』に近い循環構造は、長く続いている二次請企業の中でもよく見られるシステムです。
外からはSESとみられることも多い企業群ですが、そのビジネスの構造や勝利条件はどちらかと言うと受託会社側に近く、単にSESと思って入社すると事故ることも多いです。
(そもそもSI界隈の受託会社自体が、この2次3次に当たる会社が多い)

そのほか、大手SIerクラスの会社の発注量はかなり大きなものになる為、大手SIer4社5社と同時に取引をする2次請層の会社と言うのはかなり大きな会社となります。ほとんどの場合は1~3社。それも主力は偏って1社2社となることが多いと思います。つまり、『取引先は少なく、固定的』な会社が2次請層では多くなります。ほか、メーカー系SIを主取引先とする場合は、子会社との取引も増える印象です。
『取引先が少なく固定的』と言う事は、安定もしますが、特定の取引先への《依存度が高い》と言うという事も同時に言えます。信用を失う行動がとてもとりづらいという事ですね。切られた時のダメージが甚大ですので。
大手SIは『リスクテイカー』としての機能もありますから、クライアントに対して常に逃げずにやり切る姿勢を取ります。
大手SIへ依存し、信頼関係を重視する2次請け層の会社は、この姿勢に追従し、一緒に死んでやるムーブを取る会社も多くみられます。
※一緒に死んでやるムーブ
本来、事前のリスク共有や対策をすることによって回避できた問題も座視し、いざトラブった時には一緒に高稼働してやんぜと言う、受け身なんだか根性あるんだかわからん謎のスタンス。昔ながらの2次・3次層に多く見られる。
3次請側の立ち回り
このあたりは会社の戦略によって幅が出てきます。
2次請を目指すルート
戦力の質を維持したままの増員、リーダー格の育成、そのための組織化、まあまあ難儀するタイミングにある企業ですね。
そこそこ大手であっても、2次請層の企業と新規取引するハードルはさほど高くはありません。2次請層の企業にとっても、バラバラで派遣エンジニアを仕入れ、自社のリーダーの工数を使って管理するという事はできればやりたくないので、体制化し、ソフトハウスの立ち回りを学んでいきたいと考えている3次請けの会社は、協力会社として人気があります。
しかし、2次請側の様に単価が高く、権限も得やすいポジションではないので、協力会社を利用して儲けると言う構造が比較的作りづらい。
加えて、会社の方針が比較的明確で、全社員がそれに従った動きとなる為、SESの様に自由度の高さ、エンジニアファースト等を全面に押し出して社員向けトークをすると言う事が難しい。ちゃんと市場に通じる戦力を育成する分、離職率も高くなりがちです。
自社メンバー中心で体制化を行い、その中に自社の未経験者を加え、育成していくというムーブは可能ですので、それで戦力を育成しつつチャンスを待ち、耐える。そんな時間になるのではないかと思います。
SES色が強いルート
2000~2010年くらいに発生した、営業能力の高いSESが成長したケースでよくみられるタイプです。
戦力の質を維持『せず』増員優先。数が確保できた結果、その中には野生のリーダー格がいたり、能力の高いメンバーがいたりしますので、それらを集めて体制化する。元請との取引も可能になると言った戦略ですね。
トップ層のエンジニアチームの能力と営業能力はそもそも高いので、うまくチャンスをつかんでエンド層や大手SI層に刺さることも多い印象があります。
このタイプのつらい点は、SESから離脱し、2次請の立ち回りに転換することが難しい点にあります。
単純に2次請のビジネスモデルに転換するには、抱えているロースキル層・メンバー層の人材が多すぎるのです。彼らの稼働を確保するために戦力を割り振る必要が出てきます。
また、『2次請を目指すルート』の時にも出ました、自由度の高さ、エンジニアファースト等を全面に押し出した社員向けトークからの離脱も難題で、これらのトーク・仕組み自体への依存度が高く、これを放棄することで発生する社内のダメージも大きなものになってしまいます。
結果、玉虫色のポジションを取ることとなり、『社員数はそこそこいるのだけど結局3次請ポジがメイン』と言う会社が多くなります。
なお、稀にこの領域を突破し、1000名弱。資本金も数億の、2次請SIクラスへ成長していく企業も発生します。
このパターンの会社の内部では何が起こり、何が違ったのか。それについては私もまだ詳しくはありません。
まとめ
他の記事とも合わせれば、だいたい業界内のこの辺の会社がどんな感じのビジネスしてるかのイメージはつかめるんでなかろうか。
SIerであれ、下請ソフトハウスであれ、その他の事業会社であれ、要は『自社のビジネスモデルに乗って自社を儲からせることができる人』と言うのが優先の採用対象となる訳ですから、自分のやりたいことやできることが近しいものであるに越したことはありません。
逆に、明らかにフィットしていないことを言っていたら、そりゃー落ちますよね。
SIer、2次、3次ソフトハウス、SES会社、それぞれ別の業態・別のビジネスモデルですので、『自社のビジネスモデルに乗って自社を儲からせることができる』と言うものの中身も異なってきます。特に、SIer、2次のあたりは『新卒学生だから応募できる』層の会社も少なくありませんので、誤情報にもよく注意し、よく調べたうえで応募・面接に挑んでください。
就活指南系や紹介会社のCAのいう事を鵜呑みにするのは、今はけっこう危険です。(彼らのメインクライアントが大手SESである可能性は低くない)できたら自分の学校出身のOBなどから情報を仕入れて、そちらを重視して作戦を考えたほうが良いです。
書いた人…寺野 克則
技術的な話もするのでエンジニアと思っている人が多いけれど、実際には営業系の経歴。(Twitterも【寺野 克則(ITだけど営業視点のアカ)】と、営業系を押し出しているのに。サムネ画像の印象が強すぎるのか。) 商品は【会社の技術】なのだから、商材を知らなすぎる営業ってふつうはあり得ないんだよ。論外。 ITには20年くらいいて、その前は法人向け通信機器販売。アレ系。 転職回数がめちゃ多く、それによりさまざまな業態からIT業界を見ることに。サービス・人材派遣・人材紹介・SES・ソフトハウス。 派遣で工場行ったこともあるよ。 リーマンショックがトドメとなり、営業としてまっとうな企業に正面から入社できる確率よりも、自分で作った方が確率高い(リスクも低い)なってことで起業。 業界の知見だけはあるのでそれを活かしてWantedlyブログやTwitter。まあまあバズったのと、ほかにもいろいろで、自前ブログに記事を載っけていくことにした。


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